「兄さんって受けだよね。ヘタレ攻めも好きだけど兄さんじゃぁ無理か…兄さんたまには攻めてギャップを見せなきゃ!」

俺が妹の異変に気がついたのはたぶんこの台詞からだと思う。
純粋無垢だったはずの妹は、いつの間にかその辺に居るような腐女子へと変貌を遂げていたのだった。
最初はただ、個人の趣味だし気にしなくてもいいと思って放っておいた。
しかし、膨れ上がりねじ曲がった妹の腐った魔の手は次第に俺へと向けられるようになり…そして、俺が妹の手引きにより見知らぬ男に犯されてしまったのがつい先日の事だった。


短スカ♂の憂鬱


「兄さん、ちょっと泣いて。写真撮るから。」

…は?
急に扉を開け訪れた妹の、急で突拍子のない台詞に俺は短剣を磨く手を止め、真剣な顔でこちらを見つめる妹の顔を凝視した。
ちなみにここはエルソード国首都リベルバーグにある自宅で、今俺がいるのは寝床であり武器整備をする場所であり…要は自室である。

「友達に頼まれちゃったの。同人誌描くために必要なんだって!だからお願い!」

いきなり泣けと言われても…そもそも同人誌って何だ。
戸惑う俺を余所に妹は俺をじっとガン視してさぁ泣けさぁ泣けと目で訴えかけてくる。
とりあえず泣き真似をしてみたが、

「そんなんじゃダメだよ!本当に泣いて?つか泣けよ」

ダメだしされた。え、ていうか今最後命令形だったよね。だったよね!?
というか視線が怖いですニアスさん。兄ちゃん怖くてがくぶるしちゃうよ?

「え…いやだってほら、俳優とかじゃあるまいし一般の兵士でしかない俺がすぐ涙を流せるわけが…」
「ッチ」

オイ、いま何か聞こえたぞ。兄ちゃんおもっきし舌打ちの音聞こえちゃったぞ!?
てかアレ?いつからそんな怖いキャラになっちゃったのかなニアスさん!
もう、ほんと怖い!なんか「掘られないと泣かないか…ゲフン、まぁ生理的な涙で我慢すれば…」とか聞こえるし!
なんかもう言葉の意味とかわかんないけど、雰囲気的に俺の命が危うい気がする!絶対そうだ!
一人ぱにくってぐるぐると目を回していると、タイミング良く玄関からノックの音が飛び込んできた。
妹が「あ、忘れてた!」と急いで玄関まで走って行く。
一人自室に取り残された俺はやっと解放されたのだろうかとホッと息を吐いた。
それが悪夢のはじまりだとも知らずに。


「私の友達の牛角さんだよ、兄さん!」
「・・・あの、お友達なのはいいんだけど・・・すごい身の危険を感じるのは何故でしょうか?」

再び現れた妹と一緒にやってきたのは、その名の通り立派な雄牛のような角のあるヘルムを被った屈強な体格のウォリアーで。
うん、妹も兵士だし、ウォリアーの友達くらいいてもいいよねっていいたいけどちょっとまて。
なんでその人(牛角さんっていうらしい)はヘルム以外ふんどししか装備してないんですか?
鍛え上げられた筋肉は日焼けしてて、しかもなんかてかてかぬらぬらと光沢をもってて…そんでもってなんかこっちをずっと見てるんですが。

「大丈夫、この人優しいんだよ?あっち方面も。」
「ちょっとまてあっち方面ってな…ちょっ、こっちくんな!何すんっ…やめ、離せ、離せって…あ、あ、アッー!!」

それから解放されるまで数時間、俺は牛の下で喘ぐことになる。


「兄さん、良い写真が撮れたよ。ありがとうw」
「・・・orz」

数時間後、自室のベットの上で目覚めた俺がまず感じたのは気だるさと気持ち悪さ、そして腰痛だった。
そして、改めて男に犯されたという事実を叩きつけられて、俺は完膚なきまでに落ち込んでいた。

「もうー。兄さん大好きー!あ、ところで写真、兄さんもいるw?」
「…い、いらない!!頼むから俺にその写真を近づけないで!!!」

横でうふふふと花を咲かせテンションのあがりまくってる妹は、俺の淫らな写真をもってはしゃぎまくっている。
お願いだからトラウマの傷をえぐらないでくれorz

「そんな…じゃぁ私が大事に取っておくねw」
「…頼むからその写真を今すぐ燃やしてこの世から消してくれorz」
「牛角さんも欲しいって言ってたし・・・」
「うわあああああああ!!!やめて、その名前をださないでええええ!」

いつの間にかいなくなっていた牛角。
急に現れて何がしたかったんだろうあいつは。
コワイコワイコワイ、牛怖い牛こわい牛こわい。

「兄さん・・・・かわいい!くすっ…。兄さん、泣きやんで!もう写真撮ってないから。よしよし、私の胸へ飛び込んでおいで兄さん!」

牛角も怖いけど、一番怖いのは妹だと確信した瞬間だった。








番外


後日談、とある部隊のたまり場にてニアスと牛角の会話。

「えへへー、牛角さんにはお世話になってるから頑張ったよー。」
「兄さん、照れてるんだよ。あぁみえて恥ずかしがり屋だもん。」
「兄さんの泣いたところ初めて見れたの。ありがとう、牛角さん!」
「だって兄さん、私の前じゃ絶対弱いところなんて見せてくれないもの・・・少し寂しいなぁ、って」
「え?今度は寝顔の写真が欲しい?いいけど・・。」
「うん、私がんばるから!それじゃ明日にでも持ってきますね!」

この後ニアスはカメラを片手に自宅に戻ったとか戻らないとか。